LIFE SHIFT ー100年時代の人生戦略 リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット

この本もなんで読もうと思ったか忘れてしまいましたが…コロナで図書館が休館中に、オンラインで読める本はビジネス関連の書籍が多かったので、多分その系列かな。期待以上におもしろく、また最近自分が考えていることにもマッチしてる内容だったかなと思いました。

 具体的には、近い将来、健康に100歳くらいまで生きるのが当たり前になってくる。そうなった場合、現在では老後の資金確保の問題に皆が苦慮しているけど、

0~20歳くらいまで →学び

20~60歳くらいまで →仕事

60歳以上      →引退(家庭や趣味を中心にした生活)

という年齢によって硬直化したステージを前提として考えるのではなく、これらを自由に行き来できるような新しい社会を作り、長く働けるようにすれば、長寿化を厄災ではなく、恩恵にできる、という前向きな提案かなと思いました。

 長く働くというと、貧困や、つらい面ばかりがイメージされがちですが、一方で、定年後に仕事を失うことで生きがいをなくしてしまう人もいる。私は以前勤めていた大学で聴いた高齢者に関する講演で、すでに生活の糧を得るための仕事をする必要のない(むしろ介護を必要としているような)年配の方々に、なんでも自由にできるとしたら、何をしたいですか、という質問をすると「人の為になる、役に立つことをしたい」と答えられる人が多いと聞いて衝撃を受けた経験があり、自分に合った、柔軟な就業スタイルで働ける仕事が必要、という提案には非常に納得できました。

以下に気になったところを抜粋します。

 

・人生が長くなり、人々が人生で多くの変化を経験し、多くの選択を行うようになれば、選択肢を持っておくことの価値が大きくなる。私たちは何かを選択するとき、それ以外のなにかをしないと選択することになる。要するに、選択するとは、選択肢(=オプション)を閉ざすことにほかならない。→金融の世界でオプションが価値があるのと同じように、人生の選択に関しても「オプション」は価値がある。人生が長くなれば、変化を経験する機会が増えるので、選択肢を持っておくことがいっそう重要になる。

 

・人材の集積地(クラスター)→サンフランシスコ、シアトル、ボストンなどのスマートシティは経済的に繁栄し、質の高いアイディアと高度なスキルを持ち、自分と同様の高スキル層の多い街に住みたいと考える人たちが集まってくる。そのような土地でこそイノベーションが急速に進むことを知っていて、他の聡明な人たちのそばで暮らし、互いに刺激し、支援しあいたいと考えるから。

 

クラウド・ロボティクス→ロボットがクラウドネットワークを通じて、他のロボットの学習成果にアクセスできるようにするテクノロジー

 

・100年ライフが当たり前になれば、人生の早い時期に一度にまとめて知識を身につける時代は終わるかもしれない。テクノロジーが目を見張る進歩を遂げると予想される以上、キャリアの初期に身につけた専門技能を頼りに長い勤労人生を生き抜けるとは考えにくい。

 

・学校教育は次第に、あらゆることの土台になる分析能力や思考の原則を築く場になっていく。そうした土台を築ければ、柔軟性とイノベーション精神を発揮し、いくつもの分野で活躍できる。

 

・いくつもの企業や業界を移り、スキルを変えながら長く働く時代に、キャリア全体を貫く要素の一つが評判だ。転職したり、他の業界に移ったりするとき、評判のよさはとりわけ大きな意味を持つ。

 

・家庭でマイナス(疲労感と罪悪感)ではなく、プラス(支えあいとくつろぎ)の体験をし、職場でマイナス(いらだちと退屈)ではなく、プラス(生産性、新しいスキル、興味深いネットワーク)を体験するための方法?

 

アイデンティティは、引き受けるものや親から受け継ぐものというより、丹念につくり上げるものになったのだ。そのプロセスでは自分についての知識が大きな意味を持つ。→自分についての知識は、変化を遂げるための道筋を示すことに加えて、人が変化を経験しながらもアイデンティティと自分らしさを保てるようにする役割をもつ。自分についてよく理解している人は、人生に意味と一貫性をもたせる道を選びやすい。

→人生で多くのステージとキャリアを経験するようになれば、そのすべてを貫く一本の柱をいっそうしっかりもつ必要が出てくる。

→「ありうる自己像」について検討する

 

・ポッセ:仕事上の友人たちで構成される人的ネットワーク

 

・マルチステージの人生が普通になり、人生でさまざまな活動を経験する順序が多様化すれば、「エイジ」と「ステージ」がかならずしもイコールでなくなる。

 

エクスプローラー:有形資産形成を主な目的にせず、可能な選択肢を探す

インディペンデント・プロデューサー:自分が主体となってビジネスを行う

ポートフォリオワーカー:自分の様々な技能を活かして、複数の企業・組織で同時に働く

 

・YAHOOS(Young Adults Holding OptiOnS)選択肢を維持するヤングアダルトたち

 

・未来に備えてお金を蓄えるとは、現在から未来にお金を移すこと

 

・ジャネット・レインウォーター「習慣化された自己観察」

 

私個人としては、ずっと同じ企業に束縛されるような生き方に息苦しさを感じてしまうし、家族の状況や自分の意欲に合わせて、学びと仕事のステージを行き来できる社会はとても魅力的に感じました。今までの世界では、そういった欲求を抑えて、同世代の「みんな」と足並みをそろえることで「安定」が得られるというメリットがあったかと思いますが、すでに新卒で大企業に勤めれば安泰、というような社会ではなくなっている現在、もっと個人のオリジナリティがある生き方が認められるし、求められる、というのはそんなに実感と違わない(机上の空論ではない)という印象を受けました。