旅の途中で/あなたに褒められたくて 高倉健

読書メータの読友さんから、高倉健さんのエッセイに西表島が登場している、という情報を教えていただき、2冊読んでみたところ、西表島について書かれているところはもちろん、そのほかの部分もとても素敵なエッセイでした。私が健さんが出ていると意識してみた映画は、鉄道員くらいで、著名な俳優さんという以外にはあまりお人柄などよく知らなかったのですが、他の出演作品も観てみたいと思うような内容でした。

 

<旅の途中で>

2003年(健さんが72歳のとき)に出版。とても静かな文章にすぐ引き込まれました。お目当ての西表島の話は、島の方の素朴な人柄の中にある崇高さみたいなものが美しく表現されていて、西表島ファンの私としてはとてもうれしかったです。健さんは映画の撮影が終わった後、石垣島西表島によくでかけられるとのことで、石垣のレストランについて書かれたところもありました(多分フサキビーチリゾート内のレストラン?)。他に印象的だったのは、パリの鉄観音茶のお話、中国の大使、宗之光という方のお話、マーロン・ブランドの涙、寒青(冬の松)のお話、トスカーナのパスタうち、唐傘と蛇の目に降る雨の音などなど。特に最後の酒井阿闍梨のお話で、回峰修行中、毎日山に入っても、毎日毎日が違うということ、季節の移り変わりは突然起こるのではなく、刻一刻と常に変化していることを語られ、一日一生、毎日新しく生まれ変わった気持ちで、とおっしゃっていたのが、その自然の景色が目に浮かぶようで、一番心に残りました。

 

◆見てみたいと思った映画

八甲田山

ゴッドファーザー(昔みたけど当時子供すぎて理解できず)

・君よ憤怒の河を渡れ

南極物語

プライベートライアン

・モンタナの風に抱かれて

シティ・オブ・エンジェル(多分みたことあるかも…)

L.A.コンフィデンシャル

・夜汽車

・初恋の来た道

 

◆気になった人物

・ヴァイオリニスト 樫本大進さん

早川書房早川浩社長

 

◆読んでみようと思った本

晩秋 山本周五郎

 

健さんはお仕事だけでなく、プライベートでも、映画や音楽、小説、街やレストランなど、たくさんの美しいものに触れ、ご自身を研鑽された文化人なんだなぁと思いました。

 

<あなたに褒められたくて>

1991年(健さんが60歳の時?)に出版。内容的に、もっと若い頃に書かれたものなのかなぁと思ってしまっていたのですが、意外とそうでもなかった。ちょっと前時代的に感じる部分や、共感できない部分もあったのですが、全体的には健さんのデリケートな感性が感じられて、やはり読んでよかったと思う書籍でした。西表島の少年の話はこちらにもちょっと書き方を変えて登場していて、このエピソードが健さんにとって印象的なものだったんだなぁと感じました。八甲田山森谷司郎監督が西表島をすごく愛された方で、お墓まで作られたとは全然知らなくてびっくりしました…どこにあるんだろう?お姫様のひざ掛け、やウサギのお守りのお話は健さんの女性に対する気持ちがとてもやさしくてかわいらしくていいなぁと思い、表題作でもある、最後のお母さんへのお気持ちを読んで、そういうものの源泉を感じました。そのほかに登場された方では、降籏康男監督のお人柄にとても感銘を受けました。

自分にとって一番得るものがあったのは、お茶の事にちょっと触れられた、「お心入れ」という章だったかなぁと思いました。確かにそういうのが理想だけど、なかなか現実的にはうまくできてないよなぁ~と…。

 

最期に、旅の途中で、に出てきた漢詩がとても素敵だったので、引用します。

 

人有悲離合

月有陰

此事古難全

願人長久

千里共嬋娟

 

曇り空と晴れた夜がある。

月には満ち欠けもある。

晴れた夜と満月が、両方うまく揃うのは難しい。

しかし、私たちの間にある友情以上の情は、

千里離れても、お互いの健康と幸福を祈りあうことができるだろう