現代を生きる日本史 須田 努/清水 克行

闘茶について家族で話題になり、参考文献~と思って、図書館で検索したところヒットした本で、神津朝夫さんの茶の湯の歴史、と合わせてとても参考になりました。ちょっと難しくて文意をつかみきれなかった部分もあると思うのですが、冒頭と最後にお話されているように、歴史上の事実を暗記するための書籍ではなく、過去に起こったことが現在の世界にとってどんな意味を持つのか、自分で検討する能力を身につけるための例題、みたいな感じでしょうか。各時代に起きたことが時系列で羅列されているのではなく、特に重要(社会の転換に影響した)と思われる事象をあげて掘り下げる形式になっています。たしかに、闘茶なんて、歴史の教科書ではそんなに重く問いあげられないようなテーマを室町文化を説明する柱として一章を割いて解説しているのですから…とても変わった本かもしれません。

 

私個人の感想としては、古代の大道路や、源氏物語のイメージからおしとやかな印象だった平安時代の女性たちの闘争「うわなりうち」、高い精神性を持っていたはずの武士の残虐性、落語が明治時代には国民教化の手段だった?など、今まで持っていたイメージを覆されるテーマが多く、そのそれぞれで、この出来事が現代の私たちが置かれている状況にこんな風に影響していたんだなぁという感動もあり、丸暗記の為つまらない、と思ってしまっていた歴史について考えが変わりました。著者の主張で特に印象的だったのは、歴史的事実は変わらなくても、それを振り返ってみている我々の置かれている状況(心情)で、その出来事の意味するところが変わってしまうということです。たとえば、高度経済成長の時代(私の子供時代もまだその雰囲気を引きずっている時代だったと思うので、なんとなく覚えがある)は、歴史とは常に右肩上がりでよくなっている(時代が新しくなるにつれて、人間の世界は改善されている)という認識をもって、すべての史実が解釈されていましたが、リーマンショックや3.11などを経た現在では必ずしもそうではないという例がすごく納得できました。特に、災害・天変地異というのはたまに起きるノイズのようなもの、としてほとんど無視されていましたが、これの影響がどれだけ大きいか知った3.11以後の私たちは、過去に起きた飢饉などの天災の影響を以前の様に小さく見積もることはできない、ということは実感としてすごくわかりました。明らかに3.11以前と以後では少なくとも日本人の考え方は大きく変わった部分があると思うので…。

 

こういう、一つのテーマを深く掘り下げる読書と、時系列で歴史を学ぶ勉強は両立してはじめて面白味があるかなぁとおもうので、教科書的な勉強もぼちぼちやっていこうと思っています。