世界を、こんなふうに見てごらん 日高敏隆

タイトルに惹かれて、初読みの著者さんですが、期待以上におもしろかったです!二宮金次郎さんが、万巻の書物を紐解くより、自然から学べ、ということをおっしゃっていますが、まさにその方法論が書かれた本と感じました。

気になったところ、いいなと思ったところを引用します。

 

イデオロギーや思想、システムといった大きいところから話をしがちだが、ひとつひとつの具体例の積み重ねでしか環境問題は動かない→具体例をいっしょうけんめい見ていくと、やがて一般解にいたる。

 

・当時、科学というものは「なぜ」を問わないものだ、と世の中一般にいわれていたと思う。How(どのように)は聞いてよいが、Why(なぜ)をきいてはいけないといわれ、そのことを疑問に思った。何人かの先生からは、そんな風に考えるのなら、東大をやめて京大へいけと言われた。

 

・人間と動物の違いは死と美を知っているか否かにある

 

・人間は、これは何だろうと思うと探らなくては気がすまないいきものだ。

 

・科学もひとつのものの見方に過ぎない→どんなものの見方も相対化して考えてごらんなさい。

 

・ある動物がなぜそのような行動をとるか。答えを知るために動物行動学では観察や実験によって行動のメカニズムや発達の仕方を考える。そのとき、いつも取り上げられるのが、その行動は生得的(遺伝)か後天的(学習)かという問題だ。

 議論は戦前から現在までずっと続いているが、そこにいちばん大きな影響を与えているのは、科学そのものというより、それぞれの時代の感覚ではないかと思う。

 

・デズモンド・モリス「裸のサル」

 

・動物によって違いがあるということよりも、いきものにはもっと根本的な共通の不思議があると、ぼくは昔からずっと思っている。→世の中の見方は、あまりにも進化論の方向に振れすぎたのではないだろうか。

 

・動物と同じ、人間は自然の前に無力だと言いながら強烈なことをやっているということを、人間自身もうそろそろ認識したほうがいい。

 

・人間には自然を破壊することはできてもコントロールすることは出来ない。

 

★たぶんぼくは、いろんなことにこだわりがないのだろう。もちろん、いきものに対してはこだわりがあるが、それは生きているものそれぞれに注ぐ関心であって、人間にだけ特別というわけではない。

 

・ヤーコプ・フォン・ユクスキュル「生物から見た世界」

 

うーん、初見で付箋を貼ったところを列挙しましたが、なんでここだったのかいまいち忘れてしまった。全体の感想としては、科学、生き物の観察を通して、人間の存在について考える本、と言えるのかな…?人間は真実を追求する存在だと言われるが、むしろ真実でないこと、つまりある種のまぼろしを真実だと思い込む存在だというほうがあたっているのではないか、というところは、村上春樹さんや河合隼雄さんの「物語」の話とか、般若心経で言われていることと似ているように思いました。一時期流行った「ソフィの世界」という哲学概論みたいなお話でも、科学は哲学の一部であり、絶対的に正しいわけではなく(現代ではこれを信仰している人が多いというだけで)、ひとつのものの見方である、ということが言われていたように思います。この方もそうですが、科学者の方の哲学的な見解を聴くのが好きなので(例えば岡潔さんとか)この本はかなり好きな部類でした。同じ著者の作品をまた読んでみたいと思います。